高低差のある土地では、擁壁の上に塀を足したいという相談がよくあります。下から見上げるとすでに高さがあるのに、上の敷地に立つと道路や隣家からの視線がそのまま入ってくるからです。
ただ、擁壁の上は「地面の上」とは事情が違います。ここでは、擁壁の上に塀を建てるときに確かめる3つのことを、条文に当たって順に整理します。
この記事の要点
・擁壁と塀は別の工作物。ただし高さを合算して見る自治体がある
・確認申請の対象になるのは高さ2mを超える擁壁であって、塀ではない
・いちばん大事なのは、擁壁が塀の重さを見込んだ設計かどうか
擁壁の上に塀を建てても良いですか?
建てられる場合が多いですが、擁壁の設計が塀の重さを見込んでいるかが前提になります。擁壁は背後の土を押さえるための構造物で、上に何を載せてよいかは擁壁ごとに違います。
確かめることは3つです。高さをどう数えるか、確認申請が要るか、擁壁が重さに耐えるか。順に見ていきます。

高さは擁壁と合わせて数えますか?
法律の条文の上では、擁壁と塀は別の工作物です。ただし実務では、合算した高さで見る自治体があります。ここは条文だけでは決まりません。
建築基準法施行令 第62条の8 は、補強コンクリートブロック造の塀の高さを「地盤面から2.2mまで」と定めています。擁壁の上に建てるなら、その塀にとっての地盤面は擁壁の天端です。条文をそのまま読めば、擁壁の高さは塀の高さに含まれません。
一方で、擁壁と塀が一体の構造物のように見える場合や、擁壁の天端と塀の間に段差がない場合は、全体をひとつの構造物として扱う運用をしている自治体があります。同じ計画でも、市区町村によって答えが変わりうるということです。
そのため、擁壁の上に塀を計画するときは、着工前に建築指導の担当課で高さの数え方を確かめておくのが確実です。自治体ごとの決まりの調べ方は別の記事にまとめました。
擁壁や塀に建築確認申請は要りますか?
高さ2mを超える擁壁は対象になります。塀そのものは対象になりません。
建築基準法 第88条第1項が、工作物のうち政令で指定するものに同法を準用すると定め、その指定を施行令 第138条第1項が列挙しています。列挙されているのは次の5つです。
工作物 | 対象になる高さ |
|---|---|
煙突 | 6mを超えるもの |
鉄筋コンクリート造の柱・鉄柱など | 15mを超えるもの |
広告塔・広告板・装飾塔など | 4mを超えるもの |
高架水槽・サイロ・物見塔など | 8mを超えるもの |
擁壁 | 2mを超えるもの |
塀はこの中にありません。つまり「塀が高いから確認申請が要る」という説明は、この条文からは導けません。ただし土を留める役目を持つものは擁壁に当たるため、高さ2mを超えれば対象になります。
すでにある擁壁に手を加えず、その上に塀を足すだけであれば、擁壁の高さは変わりません。新たに擁壁をつくる、あるいは擁壁を高くするなら、2mの線を意識することになります。
擁壁は塀の重さに耐えられますか?
ここが一番の要点です。擁壁の設計が、上に載るものの重さをどこまで見込んでいたかによります。設計図が残っていれば、そこに書かれています。
擁壁は、背後の土が押す力に抵抗するようにつくられています。上に塀が載ると、その重さが加わり、土の押す力の計算前提も変わります。施行令 第142条は、確認申請の対象となる擁壁について次のような基準を定めています。
- 鉄筋コンクリート造・石造など、腐食しない材料を用いること
- 裏面の排水のため水抜穴を設け、その周辺に砂利などを詰めること
- 国土交通大臣が定める基準に従った構造計算で安全性が確かめられること
逆に言えば、水抜穴が詰まっている、ふくらみや傾きがある、施工時期が分からない、といった擁壁は、上に何かを足す前に状態を確かめる対象です。既存の塀を点検するときの着眼点は擁壁にもそのまま当てはまります。
擁壁に余裕がないと分かったとき、選択肢は「塀をあきらめる」だけではありません。載せるものを軽くする、という方向があります。
擁壁の上でも高さが足りないときは
擁壁の上に建てられる塀の高さは、擁壁が受け止められる重さで決まってきます。重い塀ほど低くしか積めない、という関係です。
M Art Wall は、発泡素材を芯材にした特殊発泡構造物です。ブロック塀と同じ見た目の厚みを持ちながら、足元にかかるものが違います。擁壁の上のように「これ以上重くできない」場所で、意匠を保ったまま高さを確保する選び方ができます。
よくある質問
擁壁の上の塀は、高さが合算されますか?
条文の上では擁壁と塀は別の工作物で、塀の高さはその塀の地盤面、つまり擁壁の天端から測ります。ただし擁壁と塀が一体に見える場合など、合算した高さで判断する運用をしている自治体があります。着工前に建築指導の担当課で確かめてください。
擁壁の上に塀を建てるのに確認申請は要りますか?
塀そのものは、建築基準法施行令 第138条第1項が列挙する工作物に含まれていないため、対象になりません。対象になるのは高さ2mを超える擁壁です。既存の擁壁に手を加えないのであれば、擁壁の高さは変わりません。
古い擁壁の上に塀を足しても大丈夫ですか?
擁壁の設計が上に載るものを見込んでいたかによります。設計図が残っていない、水抜穴が詰まっている、ふくらみや傾きがあるといった場合は、足す前に状態を確かめる必要があります。判断がつかないときは擁壁の専門家に見てもらってください。
擁壁の水抜穴は何のためにありますか?
背面にたまった水を抜くためです。施行令 第142条第1項第三号が、裏面の排水を良くするため水抜穴を設け、その周辺に砂利などを詰めることを求めています。詰まると背面の水圧が上がり、擁壁が押される力が増します。
まとめ
擁壁の上に塀を建てるときは、次の順で確かめると迷いません。
- その自治体が高さを合算して見るかどうか
- 擁壁の高さが2mを超えていないか(超える擁壁を新設・変更するなら確認申請の対象)
- 擁壁の設計が、上に載るものの重さを見込んでいたか
- 見込んでいなければ、載せるものを軽くできないか
高低差のある土地は、平らな敷地とは前提が違います。先に擁壁の側から考えると、その後の意匠の相談が進めやすくなります。
どのくらいの高さが必要か、その擁壁の上で何ができるか。図面や現地の写真があれば、より具体的にお話しできます。設置できるか・どんな意匠にできるか、まずご相談ください。ご相談は無料です。

