擁壁の上、盛土の際、道路より一段高い駐車場。敷地に高低差があると、「ここに柵を付けないと危ないのでは」という話が出ます。
ところが、いざ根拠を調べようとすると出てきません。建築基準法に、敷地の段差そのものへ柵を義務づけた条文がないからです。ここでは、代わりに何が関わってくるのかを整理します。
この記事の要点
・敷地の高低差そのものに柵を義務づけた条文は建築基準法にない
・建築物には定めがある。屋上や2階以上のバルコニーは1.1m以上(施行令 第126条)。ただし適用は用途・階数三以上・無窓の階・延べ千平方メートル超の建築物に限られる(同 第117条第1項)
・敷地側で効いてくるのは自治体のがけ条例と、倒れたときの工作物責任
敷地の高低差に柵を設ける義務はありますか?
建築基準法には、敷地の段差そのものに柵を求める条文がありません。義務の有無は、自治体の条例で決まります。
これは「危なくない」という意味ではありません。国の法律が一律に決めていないため、地域ごとの条例に委ねられている、ということです。

建築基準法が定めているのはどこですか?
建築物の側です。施行令 第126条第1項が、次のように定めています。
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
対象は屋上広場と2階以上のバルコニーです。高さは1.1m以上。手すり・柵・金網のいずれでも構いません。ただし、この規定がかかる建築物の種類は限られています。
この条文は建築物の一部についてのものなので、庭や駐車場の段差には直接かかりません。1.1mという数字だけが独り歩きしていることがありますが、根拠はここです。
種類を限っているのは施行令 第117条第1項です。「この節の規定は、法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は延べ面積が千平方メートルをこえる建築物に限り適用する」とあり、第126条はこの節(第5章第2節「廊下、避難階段及び出入口」)に置かれています。
並んでいる4つは、どれか1つに当たれば適用されるという書き方です。2階建てで、この4つのいずれにも当たらない戸建住宅は、この規定の対象になりません。逆に、3階建ての住宅は「階数が三以上である建築物」に当たるので対象に入ります。
同じ「設置基準」でも、道路・建物・敷地で別の決まりが動きます。名前ごとの違いは転落防止柵の設置基準は? 道路・建物・敷地で違うにまとめました。
敷地側では何が関わりますか?
大きく3つあります。
1. 自治体のがけ条例
多くの都道府県・市区町村が、一定の高さと勾配を超える傾斜地について条例を設けています。「がけ」の定義も、求められる措置も自治体ごとに違います。高さ2mからのところもあれば3mからのところもあります。
自分の敷地がどれに当たるかは、建築指導の担当課で確かめるのが確実です。調べ方の手順は別記事にまとめました。
2. 擁壁としての扱い
段差を土留めで押さえているなら、それは擁壁です。施行令 第138条第1項第五号により、高さ2mを超える擁壁には第142条の技術的基準がかかります。建築確認申請の対象になるのは、都市計画区域・準都市計画区域(知事が指定する一部の区域を除く)などの区域内の場合です(建築基準法 第88条第1項)。宅地造成及び特定盛土等規制法や都市計画法などの許可を受けなければならない擁壁には、建築基準法 第88条第4項により確認申請の規定が適用されません。
対象 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
屋上・2階以上のバルコニー(特殊建築物・階数三以上などに限る) | 施行令 第126条・第117条第1項 | 1.1m以上の手すり・柵・金網 |
敷地の段差 | 自治体のがけ条例 | 地域ごとに定めが違う |
2mを超える擁壁 | 施行令 第138条・第142条 | 技術的基準(区域内では確認申請も) |
3. 倒れたときの責任
民法 第717条第1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害が生じたとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償する責任を負うと定めています。
所有者の責任には、過失がなかったという言い分が通りません。柵や擁壁を設けたあとも、状態を保つことが求められるということです。
柵を建てるとき、高さの制限はかかりますか?
何でつくるかによります。工法ごとに根拠条文が違うためです。
- 補強コンクリートブロック造の塀 … 高さ2.2m以下(施行令 第62条の8)
- 組積造のへい … 高さ1.2m以下(施行令 第61条)
- 金属のフェンス … これらの条文の対象ではない
段差の上に重い塀を建てると、その重さが下の擁壁や地盤にかかります。擁壁の上に塀を建てるときの考え方と同じ問題です。転落を防ぎたいだけなら、重さを増やさない選び方もあります。
段差の上に、目隠しも兼ねた意匠を立てたいとき
転落を防ぐだけなら金属のフェンスで足ります。ただ、高低差のある敷地は下から見上げられる位置にあることが多く、目隠しと見た目を兼ねたいという相談がよくあります。
M Art Wall は発泡素材を芯材にした特殊発泡構造物です。ブロック塀と同じ見た目の厚みを持ちながら、足元にかかるものが違います。段差の上という、重さを足しにくい場所で選べる幅が広がります。
よくある質問
敷地の高低差に柵を設ける義務はありますか?
建築基準法には、敷地の段差そのものに柵を義務づけた条文がありません。関わってくるのは自治体のがけ条例で、「がけ」の定義も求められる措置も地域ごとに違います。建築指導の担当課で確かめてください。
転落防止の柵は何mあればよいですか?
建築基準法施行令 第126条が1.1m以上と定めているのは、屋上広場と2階以上のバルコニーについてです。ただし、この規定が置かれた節には施行令 第117条第1項があり、適用されるのは別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの用途の特殊建築物、階数が三以上の建築物、無窓の居室がある階、延べ面積が千平方メートルを超える建築物の4つに限られます。2階建てで、これらに当たらない戸建住宅は、この規定の対象になりません。庭や駐車場の段差には直接かかりません。敷地側の数字は自治体の条例によります。
高さ2mの段差があります。確認申請は要りますか?
段差を土留めで押さえているなら擁壁に当たり、高さ2mを超えると、都市計画区域・準都市計画区域などの区域内では施行令 第138条第1項第五号と建築基準法 第88条第1項により確認申請の対象になります。宅地造成及び特定盛土等規制法や都市計画法などの許可を受けなければならない擁壁は、建築基準法 第88条第4項により除かれます。2mちょうどは「超える」に当たりません。自然の斜面のままであれば擁壁ではありません。
柵が倒れて隣にけがをさせたら、誰の責任になりますか?
民法 第717条第1項により、設置または保存に瑕疵があったときは、まず占有者が責任を負います。占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは、所有者が負います。所有者の責任は、過失がなかったことを理由に免れられません。
まとめ
高低差のある土地では、次の順で確かめると整理できます。
- その段差は建築物の一部か、敷地か(前者で、かつ令117条1項の対象なら施行令 第126条)
- 自治体のがけ条例の対象に入るか
- 土留めがあるなら、高さ2mを超えていないか
- 設けたあと、状態を保つ責任が続くこと(民法 第717条)
「何cm必要か」の前に、「どの決まりの対象なのか」を先に決めるほうが早く片づきます。
その段差の上に何を立てられるか。図面や現地の写真があれば、より具体的にお話しできます。設置できるか・どんな意匠にできるか、まずご相談ください。ご相談は無料です。

