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セットバックした敷地に塀は建てられる?

セットバックした敷地に塀は建てられる?

特定行政庁が2項道路に指定した幅員4m未満の道に面した敷地は、建て替えのときに道路の中心線から一定の距離まで下がります。この後退線より道路側に塀は建てられません。敷地側になら建てられます。ただし敷地側でも、施行令の仕様規定と、壁面線・地区計画・条例には従います。

この記事の要点
・後退線より道路側は「道路」とみなされ、建築基準法第44条第1項が築造を禁じています
・起点は基準時の道の中心線で、いまの中心線ではありません
・既存の塀を残せるかは特定行政庁で運用が割れています

セットバックとは何ですか?

指定を受けた幅員4m未満の道を道路とみなし、中心線から2mの線を境界線とみなす制度です。

2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。

後退距離はいつも2mですか?

常に2mではありません。括弧書きの6m区域内は3m(支障がないと認める場合は2m)、ただし書の崖地等に沿う道は崖地等の道の側の境界線から4m、法第42条第3項の別指定は2m未満1.35m以上です。

国の運用指針は、みなし境界線の位置を「現在の道路の中心線ではなく基準時の道の中心線から振り分けた位置」(崖地等の記述は略)とします。向かいが先に後退していても、そこから測りません。

後退線の起点は基準時の道の中心線で、その線より道路側に塀は建てられない。
後退線の起点は基準時の道の中心線で、その線より道路側に塀は建てられない。

後退した部分に塀は建てられますか?

建てられません。後退線より道路側は法上「道路」とみなされ、法第44条第1項の道路内の建築制限がかかります。

(道路内の建築制限)第四十四条 建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。/一 地盤面下に設ける建築物/二 公衆便所、巡査派出所その他これらに類する公益上必要な建築物で特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの/三・四…(第三号・第四号は略)

ただし書の例外に塀は含まれません。塀が対象になるのは、法第2条第1号が建築物に「これに附属する門若しくは塀」を含めているからです。前提は建物に附属する塀です。運用指針も「建築物に付属する門又は塀は当然に建築物として道路内の建築制限が課されるものである。」とし、国のガイドラインも後退部分を「法上は道路敷とみなされ…建築等が禁止されています」とします。

今ある塀はそのまま残せますか?

敷地のある特定行政庁の運用で決まります。法第3条第2項は施行・適用の際に現に存して適合しない部分にその規定を適用しないとし、同条第3項第3号は、その後に着手する増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替にはその保護が及ばないとします。運用指針の解説はこうです。

● 2項道路に接する敷地における建築物の建築に当たっては、当該建築物及びこれに附属する門又は塀についても当然にセットバック義務が生じているため、2項道路のみなし境界線内に門又は塀が残存している場合は当然に法第44条に適合していないこととなることに留意されたい。

特定行政庁

後退線内の既存の塀の扱い

加古川市(兵庫県下)

既存不適格として扱ってきたが、運用指針と同解説を受けてやめ、平成23年4月1日から統一運用

岡山市(取扱基準A-002)

塀の増築・改築と更地新築は既存遡及で後退が必要。軽微な補修・取替のみ、建物の増改築だけなら後退は不要

同じ状況でも結論が逆になります。

塀の撤去は誰がいつ行うのですか?

期限を定めた条文はありません。問われるのは建築の場面です。加古川市は、新築・増改築・移転・大規模の修繕・模様替の確認申請で、配置図に後退線内の門・塀を撤去する旨の明記を求め、無ければ確認済証を、完了検査時に残っていれば検査済証を交付できないとします。

手配は多くの場合、申請者の側です。国土交通省の事例集の実態調査では、除却の実施者は「申請者が業者に委託」74.6%、「地方公共団体が業者に委託等」25.4%(n=67、令和元年5・6月に283団体照会・273団体回答)。

後退線より内側なら自由に建てられますか?

「自由」ではありません。法第44条第1項が禁じるのは道路内と道路への突出までで、敷地側の塀を禁じる条文はありません。ただし別の規定が生きています。

(塀)第六十二条の八 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ一・二メートル以下の塀にあつては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

七つの号は高さ・壁厚・鉄筋・控壁の突出・定着・基礎の丈と根入れ。壁面線が指定された区域では、高さ2mを超える門やへいは壁面線を越えられません(法第47条)。壁面線は特定行政庁が個別に指定するもので、どこにでもある制限ではありません(法第46条第1項)。

後退した分、建てられる面積は減りますか?

減りません。後退部分ははじめから敷地面積の外です(施行令第2条第1項第1号)。

一 敷地面積 敷地の水平投影面積による。ただし、建築基準法(以下「法」という。)第四十二条第二項、第三項又は第五項の規定によつて道路の境界線とみなされる線と道との間の部分の敷地は、算入しない。

ガイドラインも「譲渡が建築可能な延べ床面積(容積率)や建築面積(建蔽率)に影響することはない」とし、所有の有無でも同じだとします。「法上は後退用地の所有についての規定はない」とも書いています。後退そのもので所有権は移りません。実態も割れ、路線の一部のみ後退した場合の所有者は民間33.7%、地方公共団体27.9%、その他38.4%(事例集、n=258、令和元年5・6月)。

よくある質問

後退部分の固定資産税はどうなりますか?

自動ではありません。ガイドラインは「民間管理であっても、申請により非課税になる場合もある」とします。事例集の実態調査は課税28.6%、非課税33.6%、その他37.8%(n=259、令和元年5・6月。図に「各地方公共団体で最も多いものを選択」の注)。その他は「所有者からの申請があった場合に非課税とする」など、状況に応じた判断です。

塀の撤去に助成はありますか?

自治体によります。国のガイドラインは補助の対象項目に門・塀等の除却・移設・新設を挙げますが、事例集の実態調査では、拡幅部分の工作物(門塀)の工事費を補助対象とする団体は、拡幅整備に係る何らかの補助を行う245団体のうち除却96(39.2%)、移設72(29.4%)、新設37(15.1%)でした(令和元年5・6月)。自治体の建築部局か狭あい道路の担当課へ。

法第44条に違反すると罰則はありますか?

あります。ただし名宛人が違います。法第101条第1項第3号は「第四十四条第一項」を列挙し、対象は当該建築物又は建築設備の設計者(設計図書を用いない、または従わないで施工した場合等は工事施工者)。所有者にかかるのは、法第9条第1項の是正命令に違反した場合の法第98条第1項第1号です。

まとめ

後退線より道路側は法上「道路」とみなされ、法第44条第1項が築造を禁じています。敷地側になら建てられますが、施行令の仕様規定と、壁面線・地区計画・条例には従います。既存の塀については、建築部局へ確認してください。

M Art Wall は軽い意匠の塀の製造・販売元で、撤去や道路の拡幅工事は請け負っていません。内側で作り替えるときは、まずご相談ください(ご相談は無料です)。

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