SNS で見た曲線の塀や、背の高い塗り仕上げの塀。うちにも、と思ったときに次に気になるのが「庭や隣の家が暗くならないか」です。
塀の影がどこまで伸びるかは、太陽の高さから計算できます。国立天文台 暦計算室の表を使って季節・地域・方角ごとに整理し、日影の決まりも条文で確かめます。
この記事の要点
・冬至の昼(南中)、平らな地面に東西に延びる、光を通さない塀の影は真北に伸び、東京で高さの約1.7倍(1.8mで約3.0m)
・同じ東京の昼で、春分は高さの約0.7倍、夏至は約0.2倍
・昼は、南側の塀の影は自分の庭へ、北側の塀の影は北の隣地の側へ落ちる。朝夕の影は昼より長い
・建築基準法の日影規制(第56条の2)の対象は、条例で指定した区域にある別表第四の建築物など。建築物に附属する塀は建築物に含まれ(第2条第1号)、日影規制を当てはめるときは、同じ敷地の二以上の建築物は一の建築物とみなされる(第56条の2第2項)
・民法第235条は日照ではなく、境界線から1m未満の距離で他人の宅地を見通すことのできる窓や縁側の目隠しの条文
塀の影は、冬にどこまで伸びますか?
地面が平らで、光を通さない塀が東西に延びるなら、東京の冬至の昼(南中)の影は塀の高さの約1.7倍です。高さ1.8mの塀で約3.0m、真北に伸びます。
影の長さは「塀の高さ÷tan(太陽の高度)」で求まります。国立天文台の表では、2026年の冬至(12月22日)の東京の南中高度は30.9°です。南中は太陽が子午線を横切る時刻で、この記事の5地点では太陽は真南にあります。
この記事の数字は、地面が平らで、塀や目隠しフェンスが東西にまっすぐ延び、光を通さない場合の、南中の時刻の値です。地点ごとの冬至の値は次のとおりです。
地点 | 冬至の南中高度 | 高さ1.8mの塀の影 |
|---|---|---|
札幌 | 23.5° | 約4.1m |
東京 | 30.9° | 約3.0m |
大阪 | 31.9° | 約2.9m |
福岡 | 33.0° | 約2.8m |
那覇 | 40.4° | 約2.1m |
表の5地点では、北にある地点ほど南中高度が低く、影が長くなります。高さ1.8mの塀では、札幌は東京より1m以上長くなります。
夏や春秋では、どのくらい短くなりますか?
同じ条件の東京の昼で、春分は高さの約0.7倍、夏至は約0.2倍です。国立天文台の表で、2026年の春分(3月20日)の南中高度は54.2°、夏至(6月21日)は77.8°です。
塀の高さ | 冬至(30.9°) | 春分(54.2°) | 夏至(77.8°) |
|---|---|---|---|
1.2m | 約2.0m | 約0.9m | 約0.3m |
1.8m | 約3.0m | 約1.3m | 約0.4m |
2.2m | 約3.7m | 約1.6m | 約0.5m |
3.0m | 約5.0m | 約2.2m | 約0.6m |
秋分(9月23日)の南中高度は54.3°で、春分とほぼ同じです。3つの時期で昼の影が最も長いのは冬至で、夏至の昼は高さ3.0mの塀でも影は約0.6mです。

塀を建てる方角で、影の落ちる先は変わりますか?
変わります。影は太陽と反対の側に落ちるので、昼の影は塀の北側に伸びます。
庭の南側に建てた塀は、昼の影を自分の庭に落とします。敷地の北側に建てた塀は、北の隣地の側に落とします。
国立天文台の表で、東京の冬至の日の出の方位は118.6°、日の入りは241.4°で(北を0°とし、東回りに測った角度)、真東・真西から南へ約29°寄っています。この日は、東側の塀は朝に、西側の塀は夕方に、影を自分の敷地の側へ落とします。
東京の夏至は日の出が60.0°、日の入りが300.0°と北に寄り、朝夕は塀の南側にも影が落ちます。
隣に影を落とす塀は、規制されますか?
建築基準法第56条の2(日影による中高層の建築物の高さの制限)の対象は、条例で指定した区域にある、別表第四に挙げる建築物です。別表第四は、たとえば第一種低層住居専用地域などでは「軒の高さが七メートルを超える建築物又は地階を除く階数が三以上の建築物」、第一種中高層住居専用地域などでは「高さが十メートルを超える建築物」を挙げています。区域の外にある高さ10m超の建築物も、冬至日に区域内の土地に日影を生じさせるものは、区域内にあるものとみなされます(第56条の2第4項)。
見るのは、冬至日の真太陽時で午前8時から午後4時まで(道の区域内は午前9時から午後3時まで)、平均地盤面から1.5m・4m・6.5mのいずれかの高さの水平面(対象区域外の部分などを除く)に、敷地境界線から5mを超える範囲で日影となる時間です。
塀については、次の規定もあります。建築基準法第2条第1号は、建築物に附属する門や塀を建築物に含めています。第56条の2第2項は次のとおりです。
同一の敷地内に二以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を一の建築物とみなして、前項の規定を適用する。
自分の敷地がこの区域に入るか、塀を含めてどう扱われるかは、お住まいの地域の建築の窓口(市区町村や都道府県)で確かめます。
民法第235条は、日照ではなく目隠しの条文です。第1項は次のとおりです。
境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
影を短くするには、高さをどう決めますか?
同じ時刻なら、影の長さは塀の高さに比例します。高くする所を、隠したい場所の前に絞ります。
東京の冬至の昼なら、高さ1.2mの塀の影は約2.0m、1.8mなら約3.0mです。目隠しが要る所だけ高くし、ほかを低く抑えれば、長い影の落ちる範囲が狭くなります。どこを隠すかの考え方は隣の家からの視線、塀は何mあれば隠れる?にまとめました。
洗濯物を干す場所など、日を当てたい所があるなら、塀からの距離も見ます。冬至の昼に表の影の長さより離れていれば、その時刻、塀の影は届きません。朝夕は影が長くなるので、日を当てたい時刻も考えて、敷地の図面に方角を書き込んで確かめます。
よくある質問
影の長さは、自分で計算できますか?
できます。国立天文台 暦計算室の「各地のこよみ」で近くの地点の南中高度を調べ、塀の高さをその高度のtanで割ります。東京の冬至なら30.9°で、tanは約0.60です。この記事と同じく、平らな地面に東西に延びる、光を通さない塀の、南中の時刻の値です。
朝や夕方の影は、昼より長いですか?
長くなります。国立天文台は、日の出・日の入りを太陽の上辺が地平線に一致する時刻としています。太陽が低いほど影は長く、東京の冬至なら、日の出のころの影は真西より北寄りに、日の入りのころは真東より北寄りに伸びます。
坂や段差のある敷地でも、同じ数字ですか?
同じとは限りません。この記事の数字は地面が平らな場合の値です。地面に高低差がある敷地では影の長さが変わることがあり、塀が東西からずれている敷地では塀から影の先までの距離が変わるので、敷地の図面で確かめます。
日影規制の区域かどうかは、どこで分かりますか?
対象区域は、別表第四の地域又は区域の全部又は一部で、地方公共団体の条例で指定する区域です(建築基準法第56条の2第1項)。お住まいの地域の建築の窓口(市区町村や都道府県)で確かめます。
まとめ
- 冬至の昼(南中)、平らな地面に東西に延びる、光を通さない塀の影は真北に伸び、東京で高さの約1.7倍(1.8mで約3.0m)、札幌で約2.3倍、那覇で約1.2倍
- 東京の昼の影は、春分で高さの約0.7倍、夏至で約0.2倍
- 昼は、南側の塀の影は自分の庭へ、北側の塀の影は北の隣地の側へ落ちる。朝夕の影は昼より長い
- 建築基準法の日影規制(第56条の2)の対象は、条例で指定した区域にある別表第四の建築物など。建築物に附属する塀は建築物に含まれ(第2条第1号)、日影規制を当てはめるときは、同じ敷地の二以上の建築物は一の建築物とみなされる(第56条の2第2項)
- 民法第235条は日照ではなく、境界線から1m未満の距離で他人の宅地を見通すことのできる窓や縁側の目隠しの条文
- 高くする所を隠したい場所の前に絞ると、長い影の落ちる範囲が狭くなる
M Art Wall は塀の製造・販売元で、施工は各地の取扱店が行います。高さのある塀で日当たりが気になるときは、敷地の図面と方角が分かるものをお送りください。具体的にお話しできます。ご相談は無料です。

