塗り仕上げの塀は色を選べるぶん、何色にするかで迷います。景観法と自治体の色彩ガイドラインに書かれていることを確かめ、決め方の手順は当社の整理で示します。
この記事の要点
・景観計画区域では、建築物や工作物の「色彩の変更」が届出の対象になりえます(景観法第16条第1項)。対象の規模は自治体ごとに違います
・色は色名でなく、色相・明度・彩度の数字(マンセル値)で伝えます
・大阪府景観色彩ガイドライン(平成21年3月)の調査では、塀は YR 系が多く、明度はおおむね7以上、彩度は4以下でした
・杉並区景観色彩ガイドラインは、建築物等の色彩について面積効果を挙げています
・大阪府のガイドラインが建物の配色で示す「色相をそろえる」「色調をそろえる」を、家と塀の合わせ方に当てはめるのは当社の読み方です
塀の色に決まりはありますか?
景観計画の区域では、塀の色を変えるのにも届出が要ることがあります。景観法は、景観計画の行為の制限に関する事項に、建築物や工作物の「形態又は色彩その他の意匠」の制限を挙げ(第8条第4項第2号イ)、区域内での建築物と工作物の「色彩の変更」を、あらかじめ景観行政団体の長に届け出る対象にしています(第16条第1項第1号・第2号)。建物に附属する塀は建築基準法第2条第1号の建築物に含まれ、景観法の「建築物」もこの定義によります(第7条第2項)。
景観法施行令は、建築物のある敷地の中で行う行為を届出から外す一方、建築物の建築等や工作物の建設等などは外していません(同令第8条第4号ロ)。この除外に入る工作物は「道路(私道を除く。以下同じ。)から容易に望見されることのない物干場その他の工作物」と消火設備です(景観法施行規則第4条)。建物に附属する塀の色の変更は建築物の建築等に当たるので、この工作物の除外は使えません。
届出が要る規模や区域は、景観行政団体ごとの景観計画や条例しだいです。景観法第16条第7項第11号は、政令又は景観行政団体の条例で定める行為を届出の規定から外しています。杉並区の例では、一定規模以上または重点区域内の建築物の建築等や工作物の建設等が届出の対象で、「一定面積以上の色の塗り替え・変更等」も含みます。塗り替えと景観の届出はブロック塀の塗装で直るもの、直らないものでも扱っています。
色はどう数字で伝えますか?
色名でなく、色相・明度・彩度の3つの数字(マンセル値)で伝えます。大阪府景観色彩ガイドラインはこう書きます。
色名からイメージする色は人によって異なります。このガイドラインでは、色を的確に伝えるためにマンセル表色系を用います。
数字 | 大阪府のガイドラインの説明 |
|---|---|
色相 | R(赤)、Y(黄)、G(緑)、B(青)、P(紫)に中間の YR、GY、BG、PB、RP を加えた10色相を、1から10の数字で表す |
明度 | 黒を0、白を10として、その間を感覚的に等しい段階に分ける |
彩度 | 無彩色を0として、色の鮮やかさが高まるほど大きくなる |
書き方は「2.5R4/10」(色相2.5R、明度4、彩度10)で、無彩色は「N8」のように書きます。
広島市景観色彩ガイドラインによれば、日本塗料工業会が発行する塗料用標準色の見本帳には、すべての色彩にマンセル値が記入されています。使用したい色彩のマンセル値を容易に調べたり、類推したりできる、としています。
街の塀は、実際どんな色が多いですか?
大阪府の調査では、塀は YR 系が多く、明度はおおむね7以上、彩度は4以下でした。大阪府景観色彩ガイドライン(平成21年3月)が、大阪市域を除く府内を4つの地域に分け、代表的な地点の色を調べた結果です。
資料 | 対象 | 書かれている傾向 |
|---|---|---|
大阪府 | 塀 | 色相は YR 系が多く、明度は概ね7以上、彩度は4以下 |
大阪府 | 建物の外装(言い換え) | 色相は R、YR、Y 系の暖色系が最も多い。明度は6以上の明るいものが多く、彩度は2以下 |
東京都 | 日本の建築物や工作物等の外装色 | 大多数が赤、黄赤、黄の暖色系3色相に属している |
大阪府は塀を、建物の外装と調和する色彩とまとめています(「建物の外装」は原文の語の言い換え)。
大阪府の行は街に多い色を調べた結果、東京都の行は外装色の傾向の説明で、どれもこの色にせよという基準ではありません。大阪府のガイドラインは府の景観計画の大規模建築物等の色彩を考える資料で、調査は冬に府内の一部の地点で行われました。
小さな見本と仕上がりで、色が違って見えるのはなぜですか?
建築物等について杉並区と東京都のガイドラインが挙げるのは、色の面積効果と素材感です。杉並区景観色彩ガイドライン(平成22年4月)はこう書きます。
色彩には面積効果があり、色面が大きくなると派手な色や暗い色はその特徴がより顕著に表れます。
続けて大規模建築物には、景観シミュレーションや大型の色見本などによる慎重な色彩選定を求めています。建築物等についての記述で、塀に向けたものではありません。東京都景観色彩ガイドラインの活用編も、建築物の素材について「マンセル値では同じように表現される色彩が、その素材感によって大きく印象を変えることがあります」とします。
塀も長く続けば大きな色面です。小さな見本だけで決めず、なるべく大きく、仕上げに近い見本で確かめるのが当社の考えです。
国の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版は、塗装工事の仕上げの色合を「あらかじめ監督職員に提出した見本帳又は見本塗板による」としています(18.1.5。官庁施設の営繕の基準で、住宅の塀は縛りません)。
家と塀の色は、どう合わせますか?
大阪府のガイドラインは、調和しやすい組み合わせとして「色相をそろえる」「色調をそろえる」を挙げています。建物に複数の色を使うときの考え方です。
- 色相をそろえる:「類似の色相を用いることによって違和感のない配色になります」
- 色調をそろえる:「明度と彩度の組み合わせによる色調をそろえることでまとまりのある配色になります」
同じ資料は類似調和を基本とし、演出の意図によっては対比調和が有効な場合もあるとします。杉並区も、住宅の色彩を考える際は周囲の景観を確認し、違和感を与えないよう配慮することが大切だとしています。
家と塀を2つの色の組み合わせと見て、家の色を見本帳の番号に当ててマンセル値を知り、色相と色調のどちらをそろえるかを決める。これが当社の読み方です。
塀の色は、どんな順番で決めますか?
- 景観計画区域か、届出の規模に当たるかを自治体に確かめる
- 家と周りの色を、見本帳の番号かマンセル値で知る
- 色相か色調をそろえる考え方で候補を絞る
- なるべく大きく、仕上げに近い見本で確かめる
- 決めた色を番号で書き残す
2から5は公的な決まりではなく、当社の整理です。

よくある質問
白い家には、どんな色の塀が合いますか?
この記事で見た公的な資料に、白い家に合う塀の色を示したものはありません。東京都のガイドラインは、白や灰色として捉えられている漆喰やいぶし瓦などの伝統的建材もわずかに黄みを帯び、全く色味のない無彩色とは異なるとしています。家の白も見本帳の番号に当ててから選ぶのが当社の考えです。
塀の色のシミュレーション画像で決めてもよいですか?
東京都と杉並区のガイドラインは、冊子の色について、印刷物のため実際のマンセル値と図版等の色彩が異なる場合があると断っています。画像は候補を絞るのに使い、最後は見本で確かめるのが当社の考えです。
色あせや汚れの目立ち方は、色で違いますか?
大阪府のガイドラインは、建物の基調色について「一般に彩度の高い色彩は褪色しやすく、淡く澄んだ色彩は汚れが目立ちやすいものです」としています。何年で色があせるかを示した公的な資料は見当たりません。
景観の届出が要るかは、どこに聞けばよいですか?
景観行政団体の窓口です。景観法第7条第1項により、指定都市と中核市の区域ではその市、その他の区域では都道府県(景観行政事務を処理する市町村の区域ではその市町村)です。
まとめ
まず景観計画区域か、届出の規模に当たるかを確かめます。そのあとは当社の整理で、家と街の色を数字で知り、色相か色調をそろえて絞り、最後は大きな見本で確かめます。
M Art Wall は意匠塀の製造・販売元で、施工は各地の取扱店が行います。仕上げは塗り仕上げ・石貼り・タイル・コンクリート調などから選べます。まずご相談ください(ご相談は無料)。

