ブロック塀が古びてきたとき、塗ればきれいになるのは確かです。ただ「塗れば直る」かというと、直るものと直らないものが分かれます。国の資料の言い方で線を引きます。
この記事の要点
・施行令第62条の8が塀に定めるのは高さ・壁厚・鉄筋・控壁・基礎で、塗装は含まれません
・国の点検チェックポイント6項目にも塗装の項目はありません
・耐震診断が健全性を見るのは、ひび割れ・風化・錆汁など表面のサインです
ブロック塀を塗ると何が変わりますか?
変わるのは外から見える色と質感だけです。建築基準法は建築物に附属する門や塀を建築物に含め(第2条第1号)、補強コンクリートブロック造の塀の仕様は施行令第62条の8が定めます。
(塀)第六十二条の八 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号…に定めるところによらなければならない。ただし、…構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。/一 高さは、二・二メートル以下とすること。
省いた第二号から第七号は、壁厚、鉄筋の径と間隔、控壁、鉄筋の定着、基礎の丈と根入れです。七つの号にも、ただし書きの構造計算にも、塗装・塗膜・仕上げは出てきません。同法第8条が求める「常時適法な状態」の適法も、この寸法と鉄筋のことです。塗り替えは美観の維持です。
塗装で塀の強さは戻りますか?
戻りません。国土交通省「既存ブロック塀等の耐震診断基準・耐震改修設計指針について」は、強さを取り戻す行為をこう置きます。
耐震診断の結果を踏まえ、構造計算に基づき補強効果を考慮して、塀の一体性および転倒防止に必要な性能を確保する耐震改修について、設計指針を示す。
構造計算で補強効果を確かめるもの、という書き方です。この資料に、塗装は改修の工法として一度も出てきません。塀について国が出す資料を通読しても、塗装や塗料の記述はありません。
点検チェックポイントにも塗装の項目はありません
国土交通省「ブロック塀等の点検のチェックポイント」は、外観の5項目と専門家に相談する1項目です。
項目 | 確かめること |
|---|---|
1 塀は高すぎないか | 地盤から2.2m以下か |
2 塀の厚さは十分か | 10cm以上か(高さ2m超なら15cm以上) |
3 控え壁はあるか | 高さ1.2m超なら3.4m以下ごとに、高さの1/5以上突出した控え壁があるか |
4 基礎があるか | コンクリートの基礎があるか |
5 塀は健全か | 塀に傾き、ひび割れはないか |
6 鉄筋は入っているか | 9mm以上が縦横とも80cm間隔以下か。高さ1.2m超なら基礎の根入れは30cm以上か |
ひとつでも不適合があれば危険なので改善しましょう、という組み立てです。塗装は6項目のどれも動かしません。この表は補強コンクリートブロック造の塀の列です。鉄筋の入っていない組積造には別列があります。れんが造・石造は令61条で、高さ1.2m以下、長さ4m以下ごとに厚さの1.5倍以上突出した控壁、根入れ20cm以上と数字が違います。
塗ってはいけない塀はありますか?
あります。危険性が確認された塀に国が求めるのは、補修や撤去であって塗装ではありません。平成30年6月の技術的助言(国住指第1130号)は、その場合は付近通行者への速やかな注意表示等及び補修、撤去等が必要だとします。
調査シート例が「健全ではない」と判定する状態
見るところ | 健全性が確保できていないと判定する状態 |
|---|---|
ひび割れ | 1.0mm以上のひび割れ |
破損・欠損 | 破損がある状態/欠損がある状態 |
風化 | 著しい風化が確認される状態 |
発錆 | 表面から錆汁が確認される状態 |
傾斜 | 5度以上の傾斜 |
ぐらつき | ぐらつきがあり、安定性に欠ける状態 |
大臣認定を受けた耐震診断基準の概要資料が示す調査シート例の判定です。法令の数値でも診断基準の本体でもありません。フロー図では、外れた塀は撤去または耐震改修へ分岐します。

塗ると点検はどうなりますか?
見て確かめる材料が、塗膜の下に隠れます。これは資料に書かれていることではなく、当社の考えです。
上の判定は、ひび割れ、破損、欠損、著しい風化、錆汁と、どれも表面のサインです。錆汁は中の鉄筋で起きていることが外に出たしるしなので、上から塗れば次に見るときには消えています。
塗る前に上の項目を見て、写真と日付を残せば、次に比べられます。
自分で塗れますか?
禁じる法令は見当たりませんが、塗ってよい日と悪い日は国の標準仕様書が数値で切っています。「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18.1.6です。
(1) 気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない。ただし、採暖、換気等を適切に行う場合は、この限りでない。/(2) 外部の塗装は、降雨のおそれのある場合又は強風時は、原則として、行わない。
公共工事の仕様書であって、住宅の塀を縛る法令ではありません。自分で塗る場合と業者の差を比べた公的なデータもありません。手がかりはこの条件と、次の下地の順番です。
塗る前の下地づくりも順番が決まっています
表18.2.5は、コンクリート面の素地ごしらえを工程順に定めます。素地を十分に乾燥させ、汚れや付着物を除去し、下地調整塗材で平滑にし、研磨紙で平らに研磨する。乾燥の日数の規定はありません。吸込止めの工程は、コンクリート面では省略するとされています。
古い塗膜はどこまで剥がすのですか?
面積の割合ではなく、劣化しているかどうかで決めます。「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7.2.1です。
塗替えで、表 7.2.1 から表 7.2.7 までのRB種の場合の既存塗膜の除去範囲は、特記による。特記がなければ、劣化部分は除去し、活膜部分は残す。
下地調整の表7.2.5も、RB種の工程1を「劣化しぜい弱な部分を除去し、活膜は残す」とします。適用は官庁施設の営繕で、塀の規定ではありません。剥がす量を割合で決める考え方は、現行の仕様書には出てきません。
色は好きに選べますか?
敷地の中の塀でも、色を自由に決められるとは限りません。景観法第8条第4項第2号イは、景観計画の制限として「建築物又は工作物…の形態又は色彩その他の意匠」を挙げます。塀は工作物なので、色も対象になりえます。
第16条第1項第2号は、景観計画区域内で工作物の色彩の変更に、景観行政団体の長への事前の届出を求めます。景観法施行令と施行規則が届出から外すのは「道路から容易に望見されることのない」工作物で、道路から見える塀は外れません。
届出が要るかも、どんな色なら通るかも、区域と規模ごとに各自治体の景観計画しだいです。全国共通の色の数値はありません。区域と規模は担当部局へ、建築確認の要否は特定行政庁へ。決め方の参考は標準仕様書18.1.5で、仕上げの色合は「見本帳又は見本塗板による」。
よくある質問
隣との境界にある塀を勝手に塗ってよいですか?
民法第229条は、境界線上の境界標、囲障、溝及び堀を相隣者の共有と推定します。共有物は、第251条が著しい変更に他の共有者の同意を求め、第252条が管理を持分の過半数で決するとし、第5項で保存行為は単独可とします。どれに当たるかは一律に決まらないので、まず隣家に相談を。
塗り替えは何年ごとが目安ですか?
周期を定めた公的な資料はありません。国の標準仕様書(令和7年版)に「耐用年数」の語はありません。塗料の等級はJIS K 5658が主要原料で1級ふっ素樹脂、2級シリコーン樹脂、3級ポリウレタン樹脂と分けますが、年数は与えていません。代わりになるのは、上の点検6項目です。
塗れば塀は長もちしますか?
塗装が塀の寿命をどれだけ延ばすかを示す公的な資料はありません。延ばさないと書いた資料もありません。確かなのは、塗っても施行令第62条の8への適合の状態は変わらないことです。
まとめ
ブロック塀の塗装で直るのは見た目です。高さ・壁厚・鉄筋・控壁・基礎という法の定めも、耐震診断が見る健全性も、塗っても変わりません。まず点検の6項目を確かめる。塗るのはその後です。
塗り替えを繰り返す前提から降りる選び方もあります。M Art Wall は軽い意匠の塀の製造・販売元で、塗装や補修は請け負っていません。作り替えを考える段になったら、設置できるか、どんな意匠にできるかを、まずご相談ください(ご相談は無料)。

