ブロック塀にひび割れを見つけたとき、まず気になるのは「埋めれば直るのか」だと思います。
国が公表している資料を読むと、塀のひび割れは表面を埋めれば収まるものと、内部の仕様に関わっていて埋めても変わらないものに分かれます。ここでは一次資料の言い方だけで、その線を引き直します。
この記事の要点
・外から見る段階の国の判定基準は「著しいひび割れ、破損又は傾斜」で、幅の数値は出てきません
・幅の線が出るのは耐震診断まで進んだ場面だけで、組積材も目地部も1.0mm以上です
・鉄筋やモルタルの充填状況、基礎の根入れに関わるものは、埋めても変わりません
塀のひび割れは放っておいて大丈夫ですか?
放っておいてよいとは言えません。建築基準法は建築物に附属する門や塀を建築物に含めたうえで、第8条第1項でこう定めています。
(維持保全)第八条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
罰則を伴う強制ではなく努力義務です。ただし設置または保存に瑕疵があって塀が倒れ、人にけがをさせれば民法第717条が働き、まず占有者が、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償責任を負います。所有者に条文上の免責はありません。
技術的助言も、点検で危険性が確認された場合には、付近を通る人への速やかな注意表示等と、補修・撤去等が必要だとしています。
どんなひび割れなら急いだほうがよいですか?
耐震診断の調査シート例が「健全性が確保できていない」と判定するのは、幅1.0mm以上のひび割れ、錆汁、5度以上の傾き、ぐらつきです。どれかが出ていれば、診断のうえでは健全とは判定されません。外から見る段階の基準は別です。
外から見る段階は、幅ではなく有無と程度で見ます
国土交通省「ブロック塀の点検のチェックポイント」の外観5項目のうち、ひび割れに関わるのは「塀に傾き、ひび割れはないか」だけで、幅の数値はありません。平成20年国土交通省告示第282号の別表第一も、判定基準は「著しいひび割れ、破損又は傾斜が生じていること。」です。定期報告の対象になる建築物に使う基準で、住宅の塀に報告義務はありません。
耐震診断まで進むと、はじめて幅の線が出ます
この数値は、国土交通省が公開する「既存ブロック塀等の耐震診断基準・耐震改修設計指針について」の調査シート例のものです。(一財)日本建築防災協会が作成し国土交通大臣が認定した基準で、法令の数値ではありません。
見るところ | 健全性が確保できていないと判定する状態 |
|---|---|
組積材のひび割れ幅 | 1.0mm以上のひび割れ |
目地部のひび割れ幅 | 1.0mm以上のひび割れ |
発錆 | 表面から錆汁が確認される状態 |
傾斜 | 5度以上の傾斜 |
ぐらつき | ぐらつきがあり、安定性に欠ける状態 |
幅を測れば危ないかどうか分かりますか?
幅だけでは決まりません。1.0mmは健全性が確保できていないことを判定するための基準で、倒れるまでの余裕を示す数値ではありません。健全性で引っかかったものは、仕様の確認へ進む前に撤去または耐震改修の側に回ります(診断フロー図の要約で、逐語ではありません)。
幅の数値で「ここから危ない」と線を引く説明も見かけますが、塀を対象にした公的な出どころは確認できませんでした。深さの基準は、どの資料にも見当たりません。
自分で埋めれば直りますか?
国の資料は、自分で埋めてよいともいけないとも書いていません。ただし補修の方針をどう決めるかは、はっきり書いています。
<第二段階:ブロック内部の診断> 補強コンクリートブロック造の場合、外観点検で問題が発見された場合等に、補修方針を検討するため、ブロックを一部取り外して以下の事項を確認する。第二段階は建築士、専門工事業者等の専門家の協力を得て診断することが望ましい。
国が想定する補修方針の検討は、中を見てから始まります。表面を埋める作業は方針を決めた結果として選ぶもので、方針を決める代わりにはなりません。


補修材はどう使い分けるのですか?
塀を対象にした使い分けの基準も見つかりませんでした。近いのは国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」で、同書4.1.4は改修工法を3種類に分けます。公共建築の改修が対象で、塀のための規定ではありません。
工法 | 中身 |
|---|---|
樹脂注入工法 | 注入エポキシ樹脂を注入する |
Uカットシール材充填工法 | 幅10mm程度、深さ10〜15mm程度の溝を設けて充填する |
シール工法 | シール材を幅10mm、厚さ2mm程度に塗布する |
同書3.2.6は、コンクリート面等のひび割れ部はポリマーセメントモルタルで補修し、幅が2mm以上の場合はUカットのうえポリウレタン系シーリング材等を充填するとしています。2mmはこの二つの境目であって、危険かどうかの判定値ではありません。表の3工法のほうは「種類は特記による」で、幅では選びません。漏水や錆汁が出ている場合は事前に協議するとされています(4.2.2)。
埋めても直らないのはどんなときですか?
内部の仕様に関わるものは、埋めても変わりません。第二段階で確かめる項目が、そのまま「変わらないもの」の一覧です。
⑥ 鉄筋の接合方法、モルタルの充填状況は、令第 62 条の 6 に照らして適切か。/⑦ 鉄筋のピッチ及び定着状況は、令第 62 条の 8 に照らして適切か。/⑧ 基礎の根入れ深さは、令第 61 条又は令第 62 条の 8 に照らして適切か。
三つとも、ブロックを一部取り外さなければ確かめられません。錆汁は中で起きていることが外に出たしるしなので、上から塗ると判断の材料が消えます。
健全性の評価で引っかかった塀は、撤去または耐震改修へ向かいます。M Art Wall は軽い意匠の塀の製造・販売元で、診断や補修は請け負っていません。作り替えを考える段でご相談ください。
どこに出ているかで見方は変わりますか?
出ている場所や向きから原因を言い当てる方法を示した公的資料は見つかりませんでした。調査シート例も組積材と目地部を同じ1.0mmで並べていて、どちらが重いとは書いていません。
控え壁の付け根なら、控え壁そのものの寸法を確かめます。点検資料は高さ1.2m超の塀について、長さ3.4m以下ごとに高さの1/5以上突出した控え壁があるかとし、施行令第62条の8第5号も「壁面から高さの五分の一以上突出」です。突出の量をセンチメートルで定めた条文はありません。
鉄筋の入っていない塀は、見るところ自体が違います
れんが造、石造、鉄筋の入っていないブロック造の塀は、点検資料でも別の欄です。高さは1.2m以下か、長さ4m以下ごとに塀の厚さの1.5倍以上突出した控え壁があるか、基礎の根入れは20cm以上か。施行令第61条が別に定めます。
よくある質問
ひび割れの幅は何ミリから危ないのですか?
塀を対象に公表されている幅の数値は、耐震診断基準の調査シート例にある1.0mm以上(組積材・目地部とも)だけです。倒壊を予測する数値ではありません。
市販の補修材で埋めても大丈夫ですか?
国の資料は定めていません。ただし補修方針を検討するときはブロックを一部取り外して中を確かめることが想定され、第二段階は専門家の協力を得て診断することが望ましいとされています。
補修すると何年もちますか?
補修が何年もつのかを示す公的な資料は見つかりませんでした。補修材ごとの持ち年数や点検の推奨周期も、国の資料には書かれていません。
まずどこに相談すればよいですか?
ブロック塀等の安全性確保に向けた行動指針では、相談を受けた事業者は診断基準を活用して説明し、依頼されたら診断基準に沿って点検するとされています。支援制度は自治体ごとに違うので、自治体の建築指導部局へ。
まとめ
塀のひび割れは、表面を埋めれば収まるものと、鉄筋・モルタルの充填状況・基礎の根入れに関わっていて埋めても変わらないものに分かれます。外から見る段階の国の基準は有無と程度の書き方で、幅の線は耐震診断の調査シート例の1.0mmだけです。
いまの塀を作り替える段になったら、その場所に設置できるか、どんな意匠にできるかを、まずご相談ください(ご相談は無料です)。

