ブロック塀を自分で壊せるか。法律はそれを禁じていません。建設リサイクル法は、請負契約によらないで自ら施工する人を「自主施工者」として明文で想定しています。先に決まっているべきなのは、がらの行き先と境界の合意です。
この記事の要点
・法律は請負契約によらず自ら施工する者を「自主施工者」として想定しています
・自分で出したがらは一般廃棄物ですが、処理対象外とする市区町村があります
・境界線上の塀は共有と推定され、単独では撤去できません
ブロック塀の撤去は自分でできますか?
できます。法律は、個人が自分で施工することを想定して条文を書いています。建設リサイクル法第9条第1項は、分別解体等の義務を、正当な理由がある場合を除き「受注者」と「請負契約によらないで自ら施工する者(自主施工者)」の両方にかけています。義務がかかるのは規模基準以上の「対象建設工事」に限られます。
国土交通省の質疑応答集も、知人等に無償で解体してもらう場合は、請負契約を締結しないならば自主施工として扱ってよく、その知人等は解体工事業を営もうとする者でなければ登録は不要としています。この文書は名称に「(案)」が付いています。請け負わせるなら、相手には同法第21条第1項の登録か建設業法の許可が要ります。
撤去に届出は要りますか?
塀だけの撤去は、多くの場合は建設リサイクル法の届出の対象になりません。対象かどうかが床面積ではなく請負代金の額で決まるからです。都道府県は条例で基準を定められるので(同法第9条第4項)、自分の都道府県を確かめてください。
同法第10条第1項は、対象建設工事の「発注者又は自主施工者」に、着手の7日前までの都道府県知事への届出を義務づけています。自分でやる人が主語に入っています。
80㎡は、建築物の解体の基準です
巷でいわれる80㎡は、塀には掛かりません。同法施行令第2条第1号の「建築物に係る解体工事」の床面積の基準だからです。国土交通省の質疑応答集は、建築物に付属する門・塀は建築物として扱うが、付属する門・塀のみの解体は構造耐力上主要な部分に該当しないため修繕・模様替等工事として取り扱い、付属しない門・塀は工作物として扱う、と整理しています。大阪府も同じ整理です。どちらも施行令第2条第3号・第4号に入り、請負代金の額で判断します。自主施工者は、請負人に施工させることとした場合の適正な請負代金相当額で判断する、と条文にあります。
撤去で出たコンクリートがらは何ごみになりますか?
自分で壊して出したがらは、産業廃棄物ではなく一般廃棄物です。廃棄物処理法第2条第4項第1号が、産業廃棄物を「事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち」政令で定めるものに限っているからです。
がれき類を定めた同法施行令第2条第9号は「工作物の…除去に伴つて生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物」ですが、この条の柱書が「法第二条第四項第一号の政令で定める廃棄物は」と受けています。9号に当たるかの前に、事業活動の要件が乗ります。産業廃棄物以外の廃棄物は第2条第2項により一般廃棄物で、個人が自宅の塀を壊す行為は事業活動ではありません。業者に頼めばその作業は事業活動なので、同じがらでも産業廃棄物になります。

出たコンクリートがらはどこへ持っていけますか?
一般廃棄物であっても、市区町村が引き取るとは限りません。自分の自治体の案内を先に確かめてください。廃棄物処理法第6条の2第1項は、市町村は一般廃棄物処理計画に従って区域内の一般廃棄物を収集し、運搬し、処分しなければならない、としています。計画の外は収集されません。
さいたま市は「収集・処理できないもの」に「家屋の解体などに伴うごみ(例)土砂・コンクリート・ブロック塀・廃材など」を挙げています。受け入れる自治体もあるので、一般化はできません。自分で運ぶこと自体は許可の対象ではありません。同法第7条第1項が市町村長の許可を求めるのは、収集又は運搬を「業として行おうとする者」です。知人や便利屋に頼むと、この許可の話になります。
敷地に埋める、空き地に置くといった始末は、同法第16条の「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」に触れるおそれがあり、第25条第1項第14号に罰則があります。
境界にある塀を勝手に撤去してよいですか?
できません。境界線上に設けた塀は、相隣者の共有に属するものと推定されます(民法第229条)。推定であって確定ではありませんが、推定される以上は単独で撤去できません。
撤去と補修では、条文が分かれます
民法第251条第1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」です。同意が要るのは、括弧書きで除かれていない「著しい変更」のほうです。著しい変更を伴わない軽微なものは第252条の管理に落ち、持分の価格の過半数で決まります。塀の撤去は著しい変更に当たるので、他の共有者の同意が要ります。
隣地に入る必要があるなら、民法第209条第1項第1号が、境界又はその付近における工作物の収去のために必要な範囲内で隣地を使用できるとしています。条件が三つ付きます。住家については、その居住者の承諾がなければ立ち入ることはできない(同項ただし書)。日時、場所及び方法は、隣地の所有者や隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ぶ(第2項)。あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を通知する(第3項)。通知が困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく通知すれば足ります(同項ただし書)。
作業の音や道路の使用に手続きは要りますか?
選ぶ道具と、その日のうちに終わるかどうかで決まります。騒音規制法第14条第1項の届出は、指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を「施工しようとする者」にかかります。自分で施工する個人を除いていません。特定建設作業は施行令第2条・別表第二に委ねられ、別表第二の第3号が「さく岩機を使用する作業…」、施行令第2条のただし書がその作業を開始した日に終わるものを除いています。
手持ちの工具だから対象外、とは言えません。振動規制法の施行令別表第二第4号は「ブレーカー(手持式のものを除く。)」と手持式を外していますが、騒音側のさく岩機に同じ除外はありません。自分の工具が該当するかを述べた公的な資料は見つかりませんでした。道具と作業日数を市町村の担当課に伝えて確かめてください。道路使用許可は、敷地の中の作業そのものではなく、作業やがらの仮置きが道路上に及ぶ場合の話です。
手続き | 宛先 | 要件 |
|---|---|---|
建設リサイクル法第10条第1項の届出 | 都道府県知事 | 着手の7日前まで。対象建設工事のみ |
騒音規制法第14条第1項の届出 | 市町村長 | 開始の7日前まで。指定地域内の特定建設作業 |
道路交通法第77条第1項第1号の許可 | 所轄警察署長 | 道路上で工事又は作業をするとき。日数の定めはない |
同じ「7日前」でも、宛先も要件も別の制度です。
よくある質問
境界標も一緒に撤去してよいですか?
いけません。刑法第262条の2は、境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした者を罰する境界損壊の罪を定めています。撤去の前に位置を写真で残してください。
基礎はどこまで撤去すればよいですか?
撤去の範囲を定めた公的な基準は見つかりませんでした。建築基準法施行令第62条の8は補強コンクリートブロック造の塀を新しく設けるときの仕様です。決まっているのは出たものの扱いで、掘り起こしたコンクリートも同じ廃棄物として行き先を先に決めます。
撤去に自治体の支援制度はありますか?
制度の主体は各自治体で、全国一律ではありません。国土交通省「建築:ブロック塀等の安全対策について」のページから、支援制度のある自治体の一覧をたどれます。
まとめ
法律は自分で撤去することを禁じていません。ただ着手の前に決まっているべきことが三つあります。がらの行き先、境界の合意、道具と工期に応じた届出です。
M Art Wall は軽い意匠の塀の製造・販売元で、撤去や解体は請け負っていません。撤去のあと何を建てるかの段になったら、設置できるか、どんな意匠にできるかを、まずご相談ください(ご相談は無料です)。

