ブロック塀の鉄筋は、いつから、どこまで決まっているのでしょうか。法が鉄筋について定めているのは、太さと間隔と末端の始末の三つだけです。
この記事の要点
・鉄筋を求めているのは建築基準法施行令第62条の8の第三号と第四号です
・径9mm以上・縦横80cm以下の間隔という数値は昭和46年1月1日から動いていません
・入っているかを所有者が外から確かめる方法は、国の資料にも用意されていません
ブロック塀の鉄筋は、どの条文で決まっているのか
建築基準法施行令第62条の8です。この条は補強コンクリートブロック造の塀の仕様を七つの号で定めています。
(塀)第六十二条の八 補強コンクリートブロック造の塀は、次の各号(高さ一・二メートル以下の塀にあつては、第五号及び第七号を除く。)に定めるところによらなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
号 | 定めていること |
|---|---|
第一号 | 高さ2.2m以下 |
第二号 | 厚さ15cm以上(高さ2m以下の塀は10cm以上) |
第三号 | 塀の上端と基礎に横、端部と隅角部に縦の鉄筋 |
第四号 | 塀の内部に縦横80cm以下の間隔で鉄筋 |
第五号 | 長さ3.4m以下ごとに控壁 |
第六号 | 鉄筋の末端の定着 |
第七号 | 基礎の丈35cm以上・根入れ30cm以上 |
施行令の本則371条のうち、塀そのものの高さ・厚さ・鉄筋・控壁・基礎を定めているのは第61条・第62条の6・第62条の8の3条だけです。
鉄筋の太さと間隔は、どこまで決まっているのか
径9mm以上、縦横とも80cm以下の間隔。この二つだけです。第三号が塀の上端と基礎には横に、端部と隅角部には縦に、第四号が塀の内部に縦横80cm以下の間隔で、それぞれ径9mm以上の鉄筋を求めています。鋼種・本数・かぶりの厚み・継手の長さは、条文に一つも書かれていません。
末端の始末は第六号です。第三号と第四号の鉄筋の末端はかぎ状に折り曲げて定着させますが、ただし書があります。
ただし、縦筋をその径の四十倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
この「径の四十倍以上」は基礎への定着の話で、鉄筋どうしの継手の長さではありません。第62条の6は、鉄筋を入れた空胴部と縦目地に接する空胴部をモルタルまたはコンクリートで埋めること、縦筋を空胴部内で継がないこと(溶接接合その他これと同等以上の強度を有する接合方法による場合を除く)を別に求めています。
鉄筋が入っていない塀は違法なのか
規定が施行された時に既にあった塀には、その規定は適用されません。建築基準法第3条第2項です。
2 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
適用されないだけで、適合したことにはなりません。規定に違反していた建築物には法第9条第1項の是正命令があり、第3条第2項で適用を受けない塀にも、著しく保安上危険と認められれば法第10条第3項の命令が届きます。どちらに当たるかを判断するのは所管の特定行政庁です。
民法第717条第1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害が生じたときの賠償責任を定めています。違法でなくても、この責任は残ります。

鉄筋はいつから求められているのか
第62条の8は昭和45年政令第333号で置かれ、昭和46年1月1日に施行されました。施行日は同政令の附則第1項で確かめられます。
この政令は、建築基準法の一部を改正する法律(昭和四十五年法律第百九号。以下「改正法」という。)の施行の日(昭和四十六年一月一日)から施行する。
その政令で第62条の8が設けられ、最初の版から鉄筋の号が入っていたことは、文部科学省サイトの参考資料「ブロック塀等に係る建築基準法施行令の主な改正経過」でたどれます。e-Govで確認できるのは、その政令が実在し、いつ施行されたかまでです。
施行日 | 政令 | 変わったところ |
|---|---|---|
昭和46年1月1日 | 昭和45年政令第333号 | 第62条の8を新設。径9mm以上・縦横80cm以下の間隔・末端の定着 |
昭和56年6月1日 | 昭和55年政令第196号 | 高さ3m→2.2m、控壁3.2m→3.4mごと、第六号にただし書 |
昭和56年6月1日に変わったのは高さの上限と控壁の間隔と第六号のただし書で、鉄筋の径と間隔は昭和46年1月1日から動いていません。同資料はこのほかに平成12年政令第312号(平成13年1月6日施行)を挙げていますが、自ら「主な改正経過」と称しており、これ以外に無いとまでは言えません。
鉄筋が入っているかは、外から確かめられるのか
所有者が外から確かめる方法は、国の資料にも用意されていません。国土交通省「ブロック塀等の点検のチェックポイント」は、高さ・厚さ・控え壁・基礎・傾きとひび割れをまず外観で見るように書き、鉄筋の項目だけを「<専門家に相談しましょう>」の側に置いています。
同省の国住指第1130号 別紙2は、鉄筋を第二段階の側に置いています。
補強コンクリートブロック造の場合、外観点検で問題が発見された場合等に、補修方針を検討するため、ブロックを一部取り外して以下の事項を確認する。…⑦ 鉄筋のピッチ及び定着状況は、令第 62 条の 8 に照らして適切か。
平成20年国土交通省告示第282号が定期調査で使う調査方法も「設計図書等により確認し又は鋼製巻尺等により測定する」です。定期調査報告の対象建築物の話で、一般の戸建ての塀に報告義務が生じるわけではありません。
(一財)日本建築防災協会が作成し、国土交通大臣が耐震診断方法と同等の方法として認定した「既存ブロック塀等の耐震診断基準・耐震改修設計指針」は、現地調査の手段に鉄筋探査機を挙げています。専門家が行う調査の手段としてで、精度や適用条件には触れていません。

鉄筋に頼らない塀という選び方はあるか
条文の作りは二通りです。施行令が鉄筋を求めているのは補強コンクリートブロック造の塀についてで、鉄筋を入れないブロック造は法令上「組積造のへい」に入り、第61条で高さ1.2m以下という別の縛りがかかります。国土交通省の点検表も組積造を「れんが造、石造、鉄筋のないブロック造」と言い換えています。もう一つは第62条の8の柱書のただし書で、平成12年建設省告示第1355号による構造計算で構造耐力上安全であることを確かめる道です。
よくある質問
昭和56年より前のブロック塀は基準を満たしていないのですか?
そうは言えません。昭和56年6月1日に変わったのは高さの上限と控壁の間隔と第六号のただし書です。昭和56年5月31日という日付は耐震改修促進法施行令第3条が定める耐震診断義務の入口の線で、第62条の8への適合・不適合の線ではありません。
鉄筋の太さはD10ですか?
施行令が定めているのは「径九ミリメートル以上」だけです。D10や40cmピッチは施行令の数値ではありません。
うちの塀も耐震診断が義務なのですか?
義務がかかるのは、建物に附属し、都道府県または市町村の耐震改修促進計画に記載された道路に接し、耐震改修促進法施行令第4条第2号の長さと高さを満たし、かつ耐震不明建築物であるものに限られます。制度としての施行は平成31年1月1日です。当てはまるかは所管行政庁に確認してください。
鉄筋が入っていれば安全ですか?
耐震診断基準は仕様規定への適合の先に「塀の一体性および転倒評価」を置いています。鉄筋の有無だけでは決まりません。
まとめ
法が鉄筋について定めているのは、径9mm以上、縦横80cm以下の間隔、末端の定着の三つで、第三号と第四号と第六号がその中身です。径と間隔は昭和46年1月1日から動いていません。入っているかどうかは、ブロックを取り外すか専門家の調査によるしかありません。
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