「鉄筋のないブロック塀は、今ある塀も撤去させてほしい」と感じる方がいます。
今ある塀に耐震診断を義務付ける決まりはあります。ただし対象は、決まった道に面した一定の大きさの古い塀だけです。建築物の耐震改修の促進に関する法律(以下「法」)と同法施行令(以下「施行令」)の条文、国土交通省・東京都の資料で、当たるかの調べ方を見ます。
この記事の要点
・診断の義務は、耐震改修促進計画に、塀を対象に報告期限とともに記載された道路に敷地が接する、建物に附属する組積造の塀(国土交通省は補強コンクリートブロック造も含むとする)で、長さと高さの線を超え、昭和56年5月31日以前に着工した、いまの基準に合わない既存耐震不適格のものにだけかかる
・高さの線は原則、塀から道路の中心までの距離÷2.5。長さの線は25m超が原則で、東京都は8m超
・塀の道を計画に記載したのは6都府県・25市町(国土交通省の資料、令和7年4月1日時点)
・義務がかからなくても、既存耐震不適格の塀には、診断と必要に応じた改修の努力義務がある
どんな塀に、耐震診断の義務がかかりますか?
次の5つをすべて満たす塀です。所有者は耐震診断を行い、期限までに結果を報告しなければなりません。
- 敷地が、耐震改修促進計画に、塀を対象に報告期限とともに記載された道路に接する(法第5条第3項第2号・第6条第3項第1号・第7条)
- 建物に附属する組積造の塀(施行令第4条第2号)。国土交通省は、補強コンクリートブロック造の塀も含むとしています
- 道に面した部分の長さと高さが、同号の線を超える
- 既存耐震不適格(地震の安全にかかわる今の決まりに合わず、建築基準法第3条第2項の適用を受けているもの。法第5条第3項第1号)
- 耐震不明建築物(法第7条第2号・第3号の括弧書き)
法第7条の柱書です。
次に掲げる建築物(以下「要安全確認計画記載建築物」という。)の所有者は、当該要安全確認計画記載建築物について、国土交通省令で定めるところにより、耐震診断を行い、その結果を、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期限までに所管行政庁に報告しなければならない。
耐震不明建築物の線は、施行令第3条です。
法第五条第三項第一号の政令で定めるその地震に対する安全性が明らかでない建築物は、昭和五十六年五月三十一日以前に新築の工事に着手したものとする。
同年6月1日以後の増築などで検査済証の交付を受けたものを除く、などのただし書があります。日付の由来はブロック塀の基準はいつから? 塀の年代の見方で扱いました。
家の前の道が計画に載っているかは、どこで分かりますか?
都道府県と市町村の耐震改修促進計画です。計画は公表されます(法第5条第6項・第6条第4項)。迷ったら、住所を伝えて建築の窓口に尋ねます。
国土交通省の資料では、令和7年4月1日時点で、沿道の建物の道を記載したのは22都府県・71市町村、塀の道は6都府県(福島県・茨城県・東京都・愛知県・大阪府・岡山県)と、25市町(茨城町・堺市・茨木市・箕面市・東大阪市と岡山県内の20市町)です。道が計画に載っていても、塀が対象とは限りません。計画は変更できます(法第5条第7項・第6条第5項)。
都の計画で塀を対象にした道は、特定緊急輸送道路です(東京都耐震改修促進計画、令和8年3月)。
長さと高さの線は、どう計算しますか?
長さは、道に面した部分が25mを超えるか。高さは、塀から道路の境界線までの水平距離に幅員の半分を足し、2.5で割った数を超えるかです。施行令第4条第2号です。
その前面道路に面する部分の長さが二十五メートル(略)を超え、かつ、その前面道路に面する部分のいずれかの高さが、当該部分から当該前面道路の境界線までの水平距離に当該前面道路の幅員の二分の一に相当する距離(略)を加えた数値を二・五で除して得た数値を超える組積造の塀であって、建物(略)に附属するもの
国土交通省の資料は「前面道路中心線からの距離の1/2.5倍を超える高さ」としています。境界線上の塀なら次のとおりです。
前面道路の幅員 | この高さを超えると当たる |
|---|---|
4m | 0.8m(2÷2.5) |
6m | 1.2m(3÷2.5) |
8m | 1.6m(4÷2.5) |
12m | 2.4m(6÷2.5) |
境界線から1m下がると、幅員4mの道で(1+2)÷2.5=1.2mです。
(略)にした長さと距離は、地形や道路の構造などで不適当なとき、都道府県知事か市町村長が規則で、長さは8m以上25m未満、幅員の半分の距離は2m以上の範囲で定められます(同法施行規則第3条・第4条の2)。25mは小規模建築物の塀が対象外となるよう決めた長さで(国土交通省の資料)、東京都の計画は8m超です。

義務がかかったら、何をしますか?
資格のある人に診断してもらい、計画に書かれた期限までに所管行政庁へ報告します。診断は、講習を修了した建築士など、同法施行規則第5条が定める人が行います。
所有者が申請すると、都道府県(市町村の計画だけに載る道なら市町村)は、診断の実施にかかった分を負担しなければなりません(法第10条。上限は同法施行規則第23条)。
報告しない、または虚偽の報告をすると、所管行政庁は報告や是正を命じることができ、命じたら公表しなければなりません(法第8条)。報告の内容も公表されます(法第9条)。国の資料の注記では、避難路沿道のブロック塀等の診断結果は65件公表済みで、54件が耐震診断基準に適合しないもの(報告命令を含む)です。
診断の結果、安全性の向上が必要なら、耐震改修に努めなければなりません(法第11条)。耐震改修には一部の除却も含まれます(法第2条第2項)。
義務がかからない塀は、そのままでよいですか?
そのままでよいとは書かれていません。既存耐震不適格の塀の所有者には、診断と、必要に応じた改修の努力義務があります。計画の道に接して長さと高さの線を超える塀は法第14条第3号、それ以外は第16条第1項です。
塀の状態の見方は塀の傾きはどこから危険? 測り方と基準に、撤去の補助の締切と対象は令和8年度のブロック塀撤去補助、締切と隣地側にまとめました。
よくある質問
建物の無い土地の塀も対象ですか?
対象になりません。施行令第4条第2号は、建物に附属する塀に限っています。
昭和56年6月以後に工事を始めた塀なら、心配いりませんか?
診断の義務はかかりません。法第7条の義務は、耐震不明建築物に限るからです。ただ、既存耐震不適格なら努力義務があります(法第14条第3号・第16条第1項)。
基準に合わないと分かったら、撤去しなければなりませんか?
法が求めるのは、耐震改修に努めることです(法第11条)。所管行政庁は指示ができ、正当な理由なく従わないと公表できます(法第12条)。命令の道は建築基準法第10条第3項にあり、第3条第2項の適用を受けている建築物の構造などを特定行政庁が著しく保安上危険と認めると、除却などを命ずることができます。建物に附属する塀は同法の建築物です(第2条第1号)。詳しくは既存不適格のブロック塀は直すべき?で扱いました。
隣の家の塀の義務は、だれにありますか?
診断の義務も努力義務も、塀の所有者にかかります(法第7条・第14条・第16条)。気になるときの進め方は隣の家のブロック塀が危ない。どうすればいい?にまとめました。
まとめ
- 診断の義務は、計画に、塀を対象に報告期限とともに記載された道に敷地が接する建物に附属する組積造の塀で、長さと高さの線を超え、昭和56年5月31日以前に着工した既存耐震不適格のものにかかる
- 高さの線は原則(水平距離+幅員の半分)÷2.5で、幅員4mの道の境界線上なら0.8m。長さは25m超が原則で、東京都は8m超
- 塀の道を記載したのは6都府県・25市町(令和7年4月1日時点)。迷ったら建築の窓口で尋ねる
- 義務がかかれば、診断して期限までに報告する。申請すると、都道府県か市町村が診断の実施にかかった分を負担する(上限あり)
- 義務がかからなくても、既存耐震不適格の塀には、診断と必要に応じた改修の努力義務がある
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