擁壁は、造りによって当てはまる基準も見るところも違います。石を積んだ擁壁なら、練積みか空石積みかで分かれ、決め手は擁壁の裏側がコンクリートで固められているかどうかです。高さは前面の下端から上端までの垂直距離で測ります。
扱うのは擁壁そのものの見分けと高さの測り方までで、上に何を載せるかは扱いません。
この記事の要点
・国土交通省のマニュアルは擁壁を7種類に分け、間知ブロック積みは①練石積み造、ガンタ積みは④空石積みに分類します
・練積みと空積みの分かれ目は、横浜市のチェックシートによれば擁壁の裏側がコンクリートで固められているかどうかです
・高さは盛土規制法施行令1条4項の定義で、擁壁の前面の上端と下端との垂直距離。高さ1m以下は国のチェックシート(案)の対象外です
自分の家の擁壁は、どの種類にあたりますか?
国土交通省の「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」は、擁壁を①練石積み造擁壁 ②重力式コンクリート擁壁 ③鉄筋コンクリート擁壁 ④空石積み擁壁(野面石積み・玉石積み等) ⑤増積み擁壁 ⑥二段擁壁 ⑦張出し床版付擁壁の7つに分類しています。④〜⑦は「宅地造成等規制法等の技術的基準に適合しない、いわゆる不適格擁壁」とされ(法令名は原文のまま。現行は盛土規制法)、地震や大雨の直後の確認が望ましいとされています。
振り分けも同じマニュアルにあります。間知石、間知ブロック積み擁壁は①に、ガンタ積み擁壁は④に、補強鉄筋を用いたコンクリートブロック造擁壁(CP型枠擁壁等)は③に分類されます。
練積みと空石積みは、どこを見れば区別できますか?
見るのは擁壁の裏側です。横浜市のチェックシートは「練積み」を「擁壁の裏側がコンクリートで固められているものです」、「空積み」を「擁壁の裏側がコンクリートで固められていないものです」と説明しています。「ガンタ積み」は「古いコンクリートの塊などを再利用して積んだ擁壁です」とされています。

同じシートは種類にも点数を割り当てていて、間知石積擁壁(練積み)が0.0、玉石積擁壁(空積み)が5.0です。排水や状態の点と足し合わせ、「総評点が高いほど、危険性が高い擁壁です」とされます。
法令が認めている擁壁の造りは何ですか?
盛土規制法施行令8条1項2号は、崖面を覆う擁壁を「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものとすること」と定めています。挙がっているのはこの3つで、空石積みは入っていません。
ただし、不適格に当たることと違法であることは同じではありません。ここまでを表にまとめます。
種類 | 見分けどころ | 公的資料での扱い |
|---|---|---|
練石積み造(間知石・間知ブロック) | 裏側がコンクリートで固められている | マニュアルの①。盛土規制法施行令8条1項2号が挙げる練積み造 |
鉄筋コンクリート造・無筋コンクリート造 | 一体のコンクリート。CP型枠擁壁等はマニュアルの③ | 同令8条1項2号が挙げる造り。同令9条の構造計算で4点 |
空石積み(野面石積み・玉石積み・ガンタ積み) | 裏側がコンクリートで固められていない | マニュアルの④。④〜⑦は「いわゆる不適格擁壁」 |
増積み・二段・張出し床版付 | 積み増した継ぎ目、上下2段の形 | マニュアルの⑤〜⑦。国のシートは専門家へ送る |
擁壁の高さは、どこからどこまでを測るのですか?
盛土規制法施行令1条4項は、擁壁の前面の「上端と下端との垂直距離を擁壁の高さとする」と定めています。下端は「擁壁の前面の下部が地盤面と接する部分」です。地面に埋まっている部分は入らず、前面に見えている縦の距離が高さです。
建築基準法と同施行令には、擁壁の高さの測り方を定めた条文がありません。盛土規制法施行令1条1項は「崖」を、地表面が水平面に対し三十度を超える角度をなす土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く)以外のものと定義しています。
高さや規模で、どんな手続きが関わりますか?
規模の数字は盛土規制法施行令3条です。盛土で高さ1mを超える崖、切土で2mを超える崖、盛土と切土を同時にして2mを超える崖、盛土そのものが2m超、面積500平方メートル超の5つ。ただし、当てはまれば許可が要るという話ではありません。盛土規制法12条1項が許可を求めているのは「宅地造成等工事規制区域内」の工事で、区域の外は対象になりません。
建築基準法の側では、高さ2mを超える擁壁が同法施行令138条1項5号の工作物として、都市計画区域などの区域内なら確認申請の対象です(同法88条。盛土規制法等の許可が要る擁壁は除外。手続きは「塀に建築確認申請は必要? 条文で確かめる」へ)。敷地について同法19条4項が求めるのは「擁壁の設置その他安全上適当な措置」で、寸法はありません。
造りによって、見るところはどう変わりますか?
鉄筋コンクリート造と無筋コンクリート造は構造計算で確かめる造り、練積み造は仕様で決まっている造りです。盛土規制法施行令9条は前者について、土圧・水圧・自重で「破壊されないこと」「転倒しないこと」「基礎が滑らないこと」「沈下しないこと」の4点を構造計算で確かめることを求めています。
練積み造は同施行令10条です。勾配・高さ・下端部分の厚さは崖の土質に応じた別表第四の基準に適合させ、組積材は控え長さ30cm以上でコンクリートにより一体にし、背面を栗石や砂利で裏込めします。同令12条は、同令8条1項1号により設ける擁壁について、壁面の面積3平方メートル以内ごとに少なくとも1個の内径7.5cm以上の水抜穴と、裏面の水抜穴の周辺などへの透水層を求めています。別表第四の寸法そのものはここでは扱いません。
自分で見て判断してよいのは、どこまでですか?
国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート(案)」は、対象を「擁壁の危険度を概略的に知りたい住民の方」とし、高さ1m以下の宅地を「ほぼ安全なものが多いので、チェックの対象外としました」としています。1m以下でも「問題のある場合は別途専門家に相談して下さい」と書かれています。
同シートは冒頭で、空石積み擁壁・増積み擁壁・2段擁壁・張出し床板付擁壁に含まれるかを尋ね、「もし含まれていれば、本来、宅地の擁壁として適さないものです」「専門家に相談することをお勧めします」としています。国のシートは、この4つを自己判定の前に専門家へ送っています。
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よくある質問
間知ブロックを積んだ擁壁は、練積みですか空積みですか?
国土交通省のマニュアルは、間知石・間知ブロック積み擁壁を「①練石積み造擁壁」に分類しています。横浜市のチェックシートの分け方では、裏側がコンクリートで固められていれば練積みです。
大谷石の擁壁はどう扱われますか?
マニュアルは「④空石積み擁壁」に分類することを基本としつつ、大臣認定を受けた構造の場合もあるため専門家に相談することが望ましい、と留保しています。横浜市の「擁壁のはなし」は大谷石積擁壁を「崩れた事例が多い擁壁」に挙げています。
擁壁の上のブロック塀は、擁壁の高さに入りますか?
一律の答えは公的資料にありません。盛土規制法施行令1条4項が定めるのは擁壁の前面の上端と下端の垂直距離で、マニュアルは「ブロック塀背面に盛土されている場合は、増積み擁壁として検討する」と注記しています。数え方は「擁壁の上に塀は建てられる? 高さの数え方」へ。
コンクリートブロックを積んだ土留めも擁壁ですか?
横浜市のチェックシートは、コンクリートブロックを「チェック対象外です。コンクリートブロックは、もともと、土を支えるのに適したものではありません」としています。補強鉄筋を用いたものは、マニュアルで「③鉄筋コンクリート擁壁」に分類されます。
まとめ
擁壁の種類は、マニュアルの7分類に実物の呼び名を当てはめると見当が付きます。練積みか空石積みかは裏側がコンクリートで固められているか、高さは前面の下端から上端まで。国のチェックシート(案)は高さ1m以下を対象外とし、空石積み・増積み・2段・張出し床板付は専門家に相談することを勧めています。そこから先は自治体の担当課か専門家に相談してください。

