子どもが蹴ったボールが、隣の家の塀に当たって傷がついた。子どもの自転車がぶつかった。弁償するのが子どもか親かは、子どもに自分の行為の責任が分かるだけの力(責任能力)があるかで分かれます。民法の条文と最高裁判所の判決、日本損害保険協会の資料から整理します。
M Art Wall は塀の製造・販売元で、法律事務所でも保険代理店でもありません。個別の事案は弁護士や契約先の保険会社・代理店に確認してください。
この記事の要点
・責任能力のない子どもは賠償の責任を負わず、原則として親(親権者)など、監督する法定の義務を負う者が賠償します(民法第712条・第714条第1項)
・親が監督義務を怠らなかったとき、または怠らなくても損害が生ずべきであったときは、親も責任を負いません(同項ただし書)
・交通のひんぱんな道路での球戯は、道路交通法第76条第4項第3号で禁じられています
・個人賠償責任保険は、通常、家族も被保険者で、子どもが起こした事故も補償されます(故意を除く。日本損害保険協会)
子どもが他人の塀を傷つけたら、だれが弁償しますか?
責任能力のある子どもは、故意又は過失があれば自分で賠償します。責任能力がなければ子どもは責任を負わず、原則として親(親権者)など、監督する法定の義務を負う者が賠償します。
故意又は過失によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法第709条)。未成年者には、次の例外があります。
第七百十二条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
責任能力は何歳からですか?
何歳からと決めた条文はありません。第712条が問うのは年齢ではなく、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を備えていたかです。
後で取り上げる最高裁判所の事件では、満11歳11か月の子どもに責任を弁識する能力がなかったことが、確定した事実として前提になっています。年齢だけで決まるものではないので、「11歳なら責任能力がない」とは言えません。
親はいつも責任を負いますか?
いつもではありません。親が監督義務を怠らなかったとき、または怠らなくても損害が生ずべきであったときは、責任を負いません。民法第714条第1項のただし書です。
第七百十四条 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
「前二条」は、未成年者の第712条と、精神上の障害による第713条です。
子どもの状態 | だれが賠償するか | 根拠 |
|---|---|---|
責任能力がある | 子ども自身(故意又は過失があるとき) | 民法第709条 |
責任能力がない | 親(親権者)など、監督する法定の義務を負う者 | 第712条・第714条第1項 |
責任能力がなく、親が義務を怠らなかった(または怠らなくても損害が生ずべきであった) | 親も負わない | 第714条第1項ただし書 |
責任能力のある子どもの事故では、第714条は親の責任を定めていません。親に責任を問えるかは、弁護士に確かめてください。

校庭のボールの事故で、最高裁はどう判断しましたか?
この事案では、親は監督義務を怠らなかったとして、親への請求を退けました。最高裁判所第一小法廷の平成27年4月9日の判決(平成24年(受)第1948号)です。
放課後に開放されていた小学校の校庭で、11歳の子どもがサッカーゴールに向けてフリーキックの練習をしていました。ボールは門扉の上を越えて道路に出て、避けようとした自動二輪車の運転者が転倒して負傷し、その後亡くなりました。
判決は、この練習を校庭の日常的な使用方法として通常の行為とし、次のように述べました。
通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。
父母は、危険な行為に及ばないよう日頃から通常のしつけをしていて、特別の事情もうかがわれないとされました。第714条第1項と第709条による請求は、どちらも棄却されています。
この判決は、人がけがをした事故についての判断で、塀などの物が傷ついた場面を扱ったものではありません。具体的に予見できたなどの特別の事情がある場合も除かれています。
家の前の道でボール遊びをしてもよいですか?
交通のひんぱんな道路での球戯は、道路交通法で禁じられています。同法第76条第4項の柱書と第3号です。
4 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。
違反には罰則があります(同法第120条第1項第10号)。交通の少ない道でも、他人の塀を傷つければ民法の賠償の問題になります。
保険で直せますか?
個人賠償責任保険に入っていれば、補償される場合があります。日本損害保険協会の相談ガイド(問80)は、日常生活で誤って他人の物を壊したりして、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を補償する保険と説明しています。一般的に、火災保険や傷害保険、自動車保険などの特約として販売されています。
責任能力のない子どもの事故について、問80 は、親権者や法定の監督義務者等も被保険者となる保険商品「もあります」としています。すべての商品ではないので、契約の内容を確かめてください。
賠償責任の全部または一部を承認しようとするときは、あらかじめ保険会社の承認を得ないと、保険金が削減される場合があります(問80)。隣の人に弁償を約束する前に、保険会社に連絡します。
傷ついた塀を見るときは
塀のひび割れの見方は塀のひび割れ、補修で直るものと直らないものにまとめています。M Art Wall は塀の製造・販売元で、施工は取扱店が行います。
よくある質問
責任能力のある子どもが壊したときも、親の保険は使えますか?
相談ガイド(問80)は、個人賠償責任保険の被保険者は通常、記名被保険者本人とその家族(配偶者、同居の親族、別居の未婚の子など)で、世帯主が契約すれば子供が起こした事故も補償されるとしています。故意による損害には、通常、保険金は支払われないともしています。
子どもの自転車が塀にぶつかったら、どの保険ですか?
相談ガイド(問81)は、自転車の事故で他人の物を壊したときに備える保険に、個人賠償責任保険を挙げています。自転車に付けられるTSマーク付帯保険は、同じ問81 の表で、事故の相手の財産が対象外です。
子どもが自分の家の塀を傷つけたら、個人賠償責任保険は使えますか?
相談ガイド(問80)は、保険金が支払われない主な場合に、被保険者と同居する親族に対する損害賠償責任を挙げています。同居の家族の塀なら、これに当たります。自分の家の塀の保険は塀は火災保険で直せる? 地震のときは?にまとめました。
酔った大人が塀を壊したら、責任を負いますか?
民法第713条は、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、賠償の責任を負わないとしています。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでないとしています。能力を欠く状態でなければ、第713条には当たりません。お酒を飲んで自分でその状態を招いた場合は、ただし書に当たるかが問われます。
まとめ
- 責任能力のある子どもは、故意又は過失があれば自分で賠償する(民法第709条)
- 責任能力のない子どもは賠償の責任を負わず、原則として親(親権者)など、監督する法定の義務を負う者が賠償する(第712条・第714条第1項)
- 親が監督義務を怠らなかったとき、または怠らなくても損害が生ずべきであったときは、親も責任を負わない(同項ただし書)
- 校庭から出たボールで人がけがをした事故で、最高裁判所は親の監督義務違反を認めなかった
- 交通のひんぱんな道路での球戯は禁止(道路交通法第76条第4項第3号)。個人賠償責任保険は契約の内容を確かめる
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