相続した実家が空き家のまま、塀が傾いてきた。空き家については、空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」)の改正(2023年〈令和5年〉12月13日施行)で、「管理不全空家等」という区分が設けられました。
管理不全空家等として勧告がされると、敷地は固定資産税の住宅用地特例から外れます。
この記事の要点
・居住その他の使用がないことが常態の建築物に附属する門又は塀等も、空家法の対象になりうる(第2条第1項・国の基本指針)
・管理不全空家等には、市町村長がまず指導し、なお改善されず特定空家等になるおそれが大きいと認めるときに勧告できる(第13条)
・国のガイドラインで塀の「傾斜」が挙がるのは特定空家等の欄
・勧告がされた管理不全空家等の敷地は、固定資産税の住宅用地特例から外れる(地方税法第349条の3の2第1項)
・設置又は保存の瑕疵で他人に損害が出たときの責任は、空家法とは別に民法第717条に定めがある
空き家の塀も、空家法の対象になりますか?
住まなくなった家が空家等に当たるなら、その家に附属する塀も対象になりえます。空家法第2条第1項は、空家等を次のように定めています。
この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
国の基本指針(総務省・国土交通省告示)は、ここでいう「建築物」を建築基準法第2条第1号の「建築物」と同義とし、「これに附属する門又は塀等」を含むとしています。
「管理不全空家」と「特定空家」は、何が違いますか?
特定空家等になる手前の段階が管理不全空家等で、市町村長がとれる措置も違います。空家法第13条第1項です。
市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
区分 | 管理不全空家等 | 特定空家等 |
|---|---|---|
根拠 | 空家法第13条 | 空家法第2条第2項・第22条 |
状態 | 適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態 | そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態など |
市町村長の措置 | 指導→勧告 | 助言又は指導→勧告→命令→代執行 |
勧告の要件は、指導をしてもなお状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときです(第13条第2項)。

塀が傾いたら、管理不全空家になりますか?
傾きだけで決まるのではなく、市町村長が管理の状況や塀を含む空家等の状態、周りへの影響を踏まえて判断します。国土交通省の「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」は、別紙1で門・塀について次の状態の例を挙げています。
区分 | 門、塀、屋外階段等の状態の例 |
|---|---|
特定空家等 | 倒壊のおそれがあるほどの著しい門、塀、屋外階段等の傾斜 |
管理不全空家等 | 構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食等 |
「傾斜」が挙がっているのは特定空家等の欄で、それも倒壊のおそれがあるほどの著しいものです。管理不全空家等の欄にあるのは、構造部材の破損や腐朽などです。
ガイドラインは、建築物等の倒壊につながるものを対象に、これらの例を参考に総合的に判断し、例によらない場合も個別の事案に応じて判断するとしています。管理不全空家等かどうかは、管理の状況だけでなく、空家等の状態や周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度等を踏まえるとも書いています。市町村が地域の実情を反映しつつ、適宜固有の判断基準を定めること等が適当ともしています。
傾きの測り方は塀の傾きはどこから危険? 測り方と基準にまとめました。
勧告を受けると、固定資産税はどうなりますか?
勧告がされた管理不全空家等の敷地は、固定資産税の住宅用地特例から外れます。地方税法第349条の3の2第1項は、特例の対象になる「住宅用地」から次の土地を除いています(括弧書きの一部)。
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等(略)に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地
住宅用地特例は、住宅用地の固定資産税の課税標準を価格の3分の1、小規模住宅用地(第349条の3の2第2項。面積200平方メートル以下の住宅用地など)は6分の1とするものです。ガイドラインは、都市計画税の特例(地方税法第702条の3)からも除外されると説明しています。
この規定の要件は勧告なので、指導を受けただけでは、この規定で外れることはありません。
相続した人は、何をすればよいですか?
相続して所有者になれば、空家法の「所有者等」として、適切な管理に努めることになります。空家法第5条です。
空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない。
所有者等が複数いるときについて、ガイドラインは、市町村長が確知している所有者等全員に勧告する必要があるとしています。
塀が倒れて人にけがをさせたら、誰の責任ですか?
空家法とは別に、民法第717条に定めがあります。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
この条文の要件に、空家法の指導や勧告を受けたかどうかは入っていません。責任と保険の考え方は塀が倒れたら誰の責任? 賠償と保険の考え方で扱っています。
よくある質問
指導を受けただけで、住宅用地特例から外れますか?
地方税法第349条の3の2第1項が空家法に関して除くのは、管理不全空家等も特定空家等も、勧告がされたものの敷地です。ただしガイドラインは、今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる家屋の敷地には、管理不全空家等や特定空家等に当たるかどうかにかかわらず、そもそも特例は適用されないとしています。
勧告のあとに塀を直したら、特例は戻りますか?
ガイドラインは、指導や勧告に係る措置の実施が確認されれば管理不全空家等ではなくなり、市町村は勧告を撤回することが望ましいとし、撤回されれば特例の要件を満たす家屋の敷地は適用対象になるとしています。
管理不全空家等にも、命令や代執行はありますか?
空家法第13条にはありません。同条が定めるのは指導と勧告で、命令(第22条第3項)と代執行(同条第9項)は特定空家等への措置です。ガイドラインは、悪化して特定空家等に当たることになっても、特定空家等として措置を講ずるときは助言又は指導から行う必要があるとしています。
隣の空き家の塀が傾いていて不安です。
空家法で管理不全空家等や特定空家等に当たるかを判断し、指導や勧告をするのは市町村長です(第13条・第22条)。隣の塀が危ないときの考え方は隣の家のブロック塀が危ない。どうすればいい?にまとめました。
まとめ
- 空き家の建物に附属する塀も、空家法の空家等に入りうる
- 管理不全空家等は指導→勧告。勧告がされると、敷地は住宅用地特例から外れる
- ガイドラインで塀の「傾斜」が挙がるのは特定空家等の欄
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