民法の請負の規定では、責任の中身は契約の内容と不具合の原因で変わります。期間の数え方と、倒れて第三者に損害が出たときの扱いも条文で整理します。
この記事の要点
・引き渡した塀が契約の内容に適合しないと、注文者(施主に限らない)から追完・報酬の減額・損害賠償・解除を求められうる(民法559条・562条〜564条)
・注文者の材料や指図で生じた種類・品質の不適合は責めを負わない。ただし不適当と知りながら告げなかったときは除く(民法636条)
・種類・品質の不適合は、注文者が知った時から1年以内の通知が要る。引渡しの時に請負人が知り、又は重大な過失で知らなかったときは除く(民法637条)
・設置又は保存の瑕疵で倒れて第三者に損害が出たら、賠償するのは占有者(必要な注意をしたときは所有者)。施工業者には、損害の原因について責任を負う者としての求償の形で及びうる(民法717条)
施工した塀に不具合が見つかったら、施工業者は何を求められますか?
引き渡した塀が契約の内容に適合しないと、注文者から修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、解除を求められることがあります。請負(民法632条)には、民法559条で売買の規定が準用されます(有償契約の性質が許さないときを除く)。

準用される民法562条1項は、目的物が「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」であるとき、修補などによる「履行の追完」の請求を認めます。買主の責めに帰すべき事由による不適合は除かれ(民法562条2項)、代金の減額は相当の期間を定めた催告を経るのが原則です(民法563条)。損害賠償と解除は、民法564条により民法415条(債務者の責めに帰することができない事由によるときを除く)・541条・542条によります。
施主や元請の指示どおりに造った場合も、責任を負いますか?
注文者の材料や指図で生じた不適合なら、原則として責めを負いません。ただし、不適当と知りながら告げなかったときは別です。民法636条は、注文者は「注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として」、追完・報酬の減額・損害賠償・解除をできないと定めます。ただし書きは「請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない」。
主語は「注文者」で、施主に限りません。指示どおりだから免れる、とは言い切れません。線は、不適当と知りながら告げなかったかどうかです。
責任はいつまで続きますか?
種類や品質の不適合は、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、それを理由に請求できなくなります。民法637条1項は、「注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは」、その不適合を理由とする追完・報酬の減額・損害賠償・解除をできないと定めます。
民法637条2項は、「仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない」としています。請負人が引渡しの時に知っていた、又は重大な過失で知らなかった不適合に、1年の制限はかかりません。
「引き渡しから1年」と「知ってから1年」は、何が違いますか?
数え始めが違います。民法637条1項の1年は、引き渡した日ではなく注文者が不適合を知った時から数える、「通知」の期間です。引渡しの時が出てくるのは、請負人がその時に知っていたか(重大な過失で知らなかったか)を見る民法637条2項です。債権が時効で消える期間は、民法166条1項という別の条文です。
塀が倒れて隣家や通行人に損害が出たら、誰が責任を負いますか?
設置又は保存に瑕疵があれば、被害者に賠償するのは塀の占有者、占有者が必要な注意をしていたときは所有者です(民法717条1項)。
民法717条の中で施工業者にかかわるのは、3項の求償です。所有者側の責任と備えは「塀が倒れたら誰の責任? 賠償と保険の考え方」にまとめました。
施工に原因があったとき、施工業者に請求が来ることはありますか?
あります。占有者又は所有者から、損害の原因について責任を負う者として求償されることがあります。民法717条3項は「前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる」と定めています。
施工業者が「その責任を負う者」に当たるかは、損害の原因が施工にあったかなど、個別の事情で決まります。迷う事案は、弁護士などの専門家に確かめてください。
場面 | 根拠条文 | 施工業者に及ぶ形 |
|---|---|---|
引き渡した塀が契約の内容に適合しない | 民法559条・562条〜564条・637条 | 注文者から追完・報酬の減額・損害賠償・解除を求められうる(種類・品質の不適合の期間の制限は民法637条) |
注文者の材料・指図で生じた不適合 | 民法636条 | それを理由に請求されない。ただし不適当と知りながら告げなかったときは除く |
設置又は保存の瑕疵で倒れ、第三者に損害 | 民法717条1項・3項 | 賠償は占有者(必要な注意をしたときは所有者)。損害の原因について責任を負う者なら求償されうる |
契約で決めておけることは何ですか?
不適合の責任について定めをするなら、その内容を契約書に書きます。建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して19条1項が掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付することを求め、13号に不適合を担保すべき責任などに「関する定めをするときは、その内容」を挙げています。項目の全体は「外構工事の請負契約書に書くことは? 建設業法19条」で整理します。
M Art Wall は発泡素材を芯材にした意匠塀の製造・販売元で、施工は取扱店が担います。取扱店の工事の責任の範囲を当社が判断する立場にはありません。取扱店には設計サポートと初回の施工指導(同行)を用意し、主要部材は工場で加工してから搬入するので、現場の工期が短くなります。仕組みは「発泡スチロール塀を取り扱うには? 取扱店の仕組み」へ。
よくある質問
下請で入った工事でも、同じ考え方ですか?
民法の請負の規定の当事者は「注文者」と「請負人」で、下請なら元請が注文者です(建設業法2条5項も「元請負人」を「下請契約における注文者で建設業者であるもの」と定義)。材料や指図による不適合の民法636条(不適当と知りながら告げなかったときを除く)も、元請との関係で考えます。
植栽の竹木に瑕疵があった場合も、民法717条の対象ですか?
民法717条2項は、1項の規定を「竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」と定めます。占有者、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償し、損害の原因について他に責任を負う者があれば、その者に求償できます(民法717条3項)。
1年以内に通知を受けたら、その後はいつまで請求されますか?
民法637条1項が定めるのは、注文者が不適合を知った時から1年以内の「通知」です(引渡しの時に請負人が不適合を知り、又は重大な過失で知らなかったときは、民法637条2項により適用されません)。債権の消滅時効は別の条文で、民法166条1項は「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき」「権利を行使することができる時から十年間行使しないとき」に債権が時効で消えると定めます。当てはめは専門家に確かめてください。
契約書に不適合の責任の定めを書かなければなりませんか?
建設業法19条1項13号は、不適合を担保すべき責任又はその履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に「関する定めをするときは、その内容」を記載事項としています。
まとめ
契約の内容に適合しない塀は、注文者(施主に限らない)から追完などを求められえます。注文者の材料や指図による不適合は、不適当と知りながら告げなかったときを除いて責めを負わず、種類・品質の不適合は注文者が知った時から1年以内の通知が要ります(引渡しの時に請負人が知り、又は重大な過失で知らなかったときは除く)。設置又は保存の瑕疵で倒れて第三者に損害が出たら賠償するのは占有者(必要な注意をしたときは所有者)で、施工業者には求償の形で及びえます。

